我が街の熱中人(その10)

我が街の熱中人
今回の熱中人 大石 奨さん
(市内光が丘在住)
大石 奨さんの写真
鈑金工芸の熱中人
 約50年、鈑金の仕事をされていた大石奨さんは、仕事のかたわら、厚さ1/100mmの銅板を折り紙のように折って鶴や亀、孔雀、花瓶の水指を作る鈑金工芸も楽しんでおられます。この工芸をできる人は相模原では3人だそうで、できた作品はすばらしい工芸品となています。
 作品を拝見させていただき、また体験させていただきながら、大石さんの鈑金人生のお話を聞かせていただきました。
鈑金人生50年

 大石さんは中学を卒業以来、約50年、鈑金の仕事をされてこられました。
 銅板で屋根を葺く仕事は真夏の暑い日には厳しい仕事となります。息子さんをその真夏の屋根の上にのせてしまい、後継者の夢が破れてしまったそうです。
 しかし、鈑金工としてのお仕事は高く評価され、52歳のときに日光東照宮の参集殿客殿の屋根を葺く仕事をされました。まず、そのお話から聞きました。
日光東照宮参集殿客殿の屋根を葺く

日光東照宮で鈑金の仕事をする仲間達の写真
日光東照宮で鈑金の仕事をする仲間達
(前列右から3人目が大石さん)
建設途中の客殿の様子の写真
建設途中の客殿の様子
 
 日光東照宮が世界遺産になる前のことです。世界遺産になってしまうと容易に増設やリフォームができなくなるため、必要な施設として参集殿客殿を建築することになりました。
 屋根は銅鈑葺きで、神奈川県鈑金組合の紹介で、相模原から大石さんを含む2名の鈑金工が派遣されることになりました。
 この屋根の鈑金の仕事は半年かかったそうです。
 
※参集殿客殿
来客や祈祷者、祭典奉仕者などを迎える施設として、また、茶会やミニコンサートなどの会場としても広く利用されています。この客殿は建築家・丹下健三氏が設計をし、平成7年に完成しました。
屋根を建築している写真1

屋根を建築している写真2

屋根を建築している写真3

屋根の棟飾りは1トンあるそうです。左の写真は破風を銅板葺きした後、この棟飾りを載せた写真です。
下の写真は屋根を葺いている写真です。
屋根を葺いている写真
50代半ば、鈑金工芸を始める

大石さんは鈑金の仕事にも匠の技が光り始めた50代半ば、1/100mmの薄い銅鈑や真鍮鈑で鶴や亀を折る鈑金工芸を始められました。1円玉にのる鶴から大きいもので幅が約30pほどの鶴まで、ボールペン、へらとペンチで器用に折っていく技術には驚かされます。
鈑金工芸の設計図の写真  最初は折り紙の要領で折っていたということですが、厚さが邪魔するので広島大学の先生と交流があった広島の鈑金屋さんが設計図を書いてもらったものを入手(左写真)。その設計図をもとに銅鈑を切り、折って作り上げていくスタイルとなったそうです。
 この設計図は日本全国で使われているそうです。
 
鈑金工芸に使う道具類の写真 ←左の写真は使用する道具達です。
鈑金の道具のボールペンは、明治の昔から使われていたそうです。
銅板で鶴を作成している写真1 屋根を建築している写真2 屋根を建築している写真3 屋根を建築している写真4
↑ボールペンで設計図どおりに線をひきます。 ↑不要なところを切り落とします。 ↑山折り、谷折りに気をつけて折っていきます。 ↑鶴のできあがり。
工芸作品の亀の写真 工芸作品の孔雀の写真 工芸作品の水指 ←工芸作品は鶴の他にも亀、孔雀、水指しなど、多彩です。