藤野地区公民館振興計画

1 藤野地区の概要
 藤野地区は、相模原市の北西に位置し、東は相模湖地区、南は津久井地区、西は山梨県上野原市、道志村、北は東京都八王子市、桧原村にそれぞれ接しています。
 地勢は、急峻な山林と相模湖に注ぎ込む多数小河川流域に集落が点在しています。
 地形は南北に長い長方形を成しており、北部に連行山をはじめ、生藤山、陣馬山など比較的急峻な山々が連なり、東京都と山梨県との境となっています。
 南部は、石老山、石砂山、峰山などの500〜600メートルのなだらかな山々が連なり、津久井地区との境に道志川が流れています。
 中央部には、西から東に相模川が流れ、その両岸にやや開けた河岸段丘があって住居が集中しており、左岸には国道20号線とJR中央本線、中央自動車道が走り、藤野地区の骨格を成しています。

 藤野地区の歴史は、数多くの遺跡や遺物により、太古から河川を臨む段丘に、人類が居住していたことが判明していますが、遠くは縄文時代にさかのぼって訪ねることができます。江戸時代には、大部分が天領となり、吉野及び関野は甲州街道の宿場町として、参勤交代をはじめとする旅人でにぎわいました。
 明治維新直後の制度下においては、韮山県に属し、その後、足柄県を経て、明治9年に神奈川県に編入されましたが、人々の暮らしは、養蚕や酪農、木炭などを中心とした農林業がさかんとなり、農村型社会の形成は、共同意識を醸成し、人情味を残したゆとりある社会を形成していきました。

 昭和の時代に入り、数度の町村合併を経て、平成19年3月に相模原市となりましたが、この間、旧藤野町では、戦中、戦後に藤野に疎開していた画家たちが構想していた「芸術村」建設の歴史的経過を踏まえ、都市住民の憩いの場、芸術家を育てる場、そして地域経済の交流の場として「ふるさと芸術村」づくりを進めて来ました。その成果として芸術、文化の多様な活動や人々の交流が盛んになって、農山村の生活文化と移り住んできた創作活動に携わる人々との交流は、これまでにない新しい世界を生み出しつつあり、さまざまな面で地域づくりへの波及をもたらしています。

2 趣旨
 藤野地区の藤野中央公民館、沢井公民館、牧野公民館、佐野川公民館は、相模原市との合併後もそのまま継承されたもので、地域と密着した生涯学習の拠点として多くの人々に使用されてきました。
 また、合併前の旧藤野町では、戦中、戦後に多くの画家が疎開し、彼らがこの地に芸術都市を作ろうという史実があったことから、昭和63年から神奈川県とともに「ふるさと芸術村構想」の事業化を展開し、芸術イベントの開催や芸術家の誘致、芸術の家の建設など様々な取り組みを行ってきました。こうしたことから、多くの町民が芸術に対する関心を持つようになって、公民館においても多くの芸術活動を展開してきたところです。また県立藤野芸術の家でも独自の文化芸術化活動を行っており、芸術をキーワードとしたまちづくりがされてきた経過があります。
 このように藤野地区では豊かな自然環境の中で、芸術のまちとしての様々な取組みがされてきたことや昔ながらの伝統的な技術や芸能などが今も盛んに行われていることから、これらを生涯学習活動の一環として充実していくとともに、少子・高齢化や地域の連帯感の希薄化、高度情報化の進展など、めまぐるしく変化する時代の課題に対応できるよう、地域活動の拠点である公民館が目標を定めて取り組んでいくため、藤野地区公民館振興計画を策定しました。

3 現状と課題
 (1) 4館の協力と連携
   昭和24年社会教育法の施行と同時に、藤野地区でも吉野公民館の建設を皮切りに各地で公民館活動が始まりました。平成に入り中央公民館、沢井公民館、牧野公民館の3館に統合され、中央公民館は町民センターの中に位置づけられていましたが、相模原市との合併を機に藤野中央公民館と改称し、公民館単独の建物として改築され、同時に職員が配置されました。この結果、旧市の公民館と同様の自主的運営機能を有する公民館と沢井、牧野、佐野川の3公民館のように職員派遣で従前どおりの運営を行う公民館が混在する状況となりましたが、藤野中央公民館は、吉野、小渕、日連、名倉地域の地区館としての役割を果たすと同時に、藤野地区の全体事業の執行や、3公民館への支援活動を行っています。
 こうした状況のなかで、4公民館がより一層市民に親しまれ、愛される社会教育施設にしていくことが求められています。

 (2) 複雑な地形と公民館
   藤野地区は、平坦部は相模川に沿った段丘のわずかな部分のみで、山間部の複雑な地形の中を道路が通っています。公共交通機関が不便で、起伏が激しく、簡単に自転車や徒歩で公民館に行くことができないなかで、駐車場の拡充と4公民館の連携と協力による公民館活動が求められています。
 公民館施設を個別にみると、沢井公民館は、昭和24年にスタートして、その後、改修はありましたが、建物の老朽化が課題となっています。
 牧野公民館は昭和32年にスタートしましたが、藤野南小学校の建設に伴い、建物は解体され、現在は建物のない組織公民館として、藤野農村環境改善センターを拠点にして活動を続けています。また、佐野川公民館は、旧佐野川中学校の跡地に建設された児童館が、その後、デイサービス施設に転化され、相模原市との合併を機に公民館となりました。

 (3) 少子高齢化と過疎
   藤野地区には、昭和40年代までは10校の小学校と3校の中学校がありましたが、その後の高度経済成長期に若い人たちが都市部に流出していきました。その結果、少子化が進み、小学校は3校、中学校は1校に統合されました。少子化が進む中で、若年層の子育て支援、高齢者の生きがいづくり、地域教育力の向上や地域福祉の充実などのために各種団体や関係機関によりいろいろ取組みが行われていますが、若い人に魅力ある公民館、高齢者にも親しめる公民館づくりが課題といえます。

 (4) 新しい文化の構築
   暮らしの豊かさと引き換えに、限りある資源を急激に消費しながら、地球的規模で環境をゆがめ、経済優先の考えの基に、大切な心の豊かさを失いつつあります。一人ひとりが多様な生き方を選択し、自然との共生や人との交流通じて新しい文化を築いていくための場として、公民館が果たす役割は重要といえます。

 (5) 交流と活用
   ふるさと芸術村構想は、芸術活動に携わる人が移り住み、新たな交流を生み出すとともに、公民館にも新しい住民の利用者が増えていますが、在住芸術家の活用や公民館を利用する団体の横の連携は十分といえない状況です。公民館におけるサークル間の交流を通じて、文化、芸術のネットワーク化に努めるとともに、在住芸術家による質の高い文化芸術にふれ、参加する機会が求められています。

4 計画の期間
 この計画の期間は、平成24年度から10年間とします。
 また、活動計画は、5年間とします。

5 基本理念
  「人と自然を生かした心豊かな学びの館」
 1 地域の自然資源や伝統文化を生かした手づくりの活動をめざします。
 2 住みよい地域づくりのために、市民の自主的ないきいきした活動をめざします。
 3 誰もが参加できる魅力ある活動を通して、仲間づくりや連帯感の高揚をめざします。
 4 質の高い文化や芸術活動に触れ合う場づくりをめざします。

6 重点目標
 (1) 地域の豊かな自然資源を活かした活動や古くから伝わる伝統的な工芸や文化などを取り入れた学習を通して地域の郷土愛の醸成に努めていきます。
 (2) それぞれが抱える地域課題を解決していくため、市民自らが主体となって講座や教室を開催します。
 (3) 誰でも気軽に参加できる事業への参加を通じて、地域住民の親睦と連帯感の高揚をめざします。
 (4) 地域在住の芸術家や藤野芸術の家との連携を図り、藤野ならではの質の高い文化、芸術に触れ合う活動を推進します。

7 4館共通活動計画
 (1) 学習・文化活動
  ・ 藤野ならではの質の高い文化・芸術活動に触れ合う機会を設定します。
  ・ 豊かな自然環境の保護、保全活動や古くから地域に伝わる伝統工芸や食文化、伝統文化の継承を通じて、地域のすばらしさを見出し、後世に伝えていきます。
  ・ 高度情報化、少子高齢化、過疎化などの地域が抱える課題解決に向けて、自らが企画立案し学習機会を設けます。
  ・ 性別、年齢にこだわらずに、誰でも気軽に参加しやすい事業の開催に務め、地域から親しまれる公民館を目指すとともに、参加者相互の親睦を図っていきます。
  ・ 各種学級の開催を通じて、生活課題や地域に密着した学習活動、文化活動を推進します。
  ・ 公民館利用団体の活動を支援し、相互の交流を深めるとともに、公民館まつり等において発表の機会を提供します。
 (2) スポーツ
  ・ 誰でも気軽に参加できるスポーツ・レクレーションへの参加機会の提供に努めるとともに、これらの活動を通して健康の増進と地域間の交流を図っていきます。
  ・ 市民による主体的かつ自主的な活動を促進していくとともに、地域スポーツ、レクレーション団体の育成、支援に努めます。
  ・ マレットゴルフやビーチボールを普及していきます。
 (3) 広報活動
  ・ 読みやすく、読んで楽しめる館報づくりに心がけるとともに、主催事業の結果及びお知らせをはじめ、地域の行事や話題についても提供していきます。
  ・ 市民が身近に情報を入手できるようホームページの内容の充実に努めます。
 (4) 青少年活動
  ・ 青少年が学習の場として集える空間づくりに努めるとともに、館区内の学校や青少年団体と連携した青少年事業を推進していきます。
  ・ 子ども教室や子どもまつり等の開催を通じて、子どもたちに地域の伝統文化や自然環境に関する学習の機会を提供するとともに、郷土愛を醸成していきます。
  ・ 地域住民の連帯感を深めるとともに、子どもたちの体力づくり、自然保護や環境美化活動を目的とした親子ハイキング活動を推進します。
 (5) 図書室活動
  ・ 要望に応じた図書資料の収集、提供を行うとともに、利用者サービスの向上に努めます。
  ・ 図書室をまちづくり資料室にするべく、まちづくり情報の収集、発信に努めていく。

8 各館個別行動計画
 藤野中央公民館地区計画
  @ 目標
   「つどう・まなぶ・むすぶ・そして人づくり地域づくり」
  A 活動計画
   ・ 各種学級の開催を通じて生活課題に密着した学習、文化活動を推進していきます。
   ・ スポーツ、レクレーションを通じて健康の増進と地域間の交流を図っていきます。
   ・ 子ども教室や子どもまつりなどを通じて、子どもたちに地域の伝統文化や自然環境に関する学習の場を提供するとともに、郷土愛を醸成していきます。
   ・ 読みやすい館報づくりと親しみのもてるホームページづくりに努めます。
   ・ 図書室の充実と利用者サービスの向上に努めます。

 沢井公民館地区計画
  @ 目標
   「明るく温かく人を育む公民館」
  A 活動計画
   ・ 公民館での学びやふれあいを通じて、地域住民の絆を深めていきます。
   ・ 古くから地域に伝わる伝統工芸や食文化のすばらしさを後世に伝えていきます。
   ・ 地域の子どもたちや青少年団体と連携した事業を展開し、郷土愛の醸成に努めていきます。
   ・ 地域の素晴しい自然環境を再発見できる学習機会を提供していきます。
   ・ 自治会と連携しながら地域住民の多くが事業に関わるような推進体制を確立していきます。

 牧野公民館地区計画
  @ 目標
   「郷土を愛し、郷土に誇りを持ち、郷土を大切にする意識を育む」
  A 活動計画
   ・ 地域の人々が安心して楽しく生活できる環境づくりを推進します。
   ・ 身近な生活課題を克服できる学習機会を提供していきます。
   ・ 地域の子どもたちや青少年団体と連携した事業を展開し、郷土愛の醸成に努めいていきます。
   ・ マレットゴルフ等、スポーツの普及に努め、健康増進と地域間交流を図っていきます。
   ・ 自治会と連携しながら、地域住民が関われる推進体制を確立していきます。
   ・ 地域の伝統的な技術や手工芸などを後世に伝えていくための学習機会を提供していきます。
   ・ 藤野芸術の家と連携した事業を推進していきます。

 佐野川公民館地区計画
  @ 目標
   「地域とともに歩み、親しみやすい公民館」
  A 活動計画
   ・ 公民館に集う仲間の輪広げ、地域の文化センターとしての役割を担っていきます。
   ・ 少子高齢化と過疎化をテーマにした学習機会を設けます。
   ・ 古くから地域に伝わる伝統工芸や食文化の継承を通じて地域のすばらしさを後世に伝えていきます。
   ・ 地域の子どもたちや青少年団体と連携した事業を展開し、郷土愛の醸成に努めていきます。
   ・ 地域の多くの団体と連携しながら、生きがいの持てる学習機会を提供していきます。
   ・ 子どもたちとお年寄りが交流できる事業の推進を図ります。

9 計画の推進に向けて
 1 公民館活動推進体制
  市民全体による公民館活動を充実していくため、必要な活動推進体制を整備します。
   ・ 住民ニーズを的確に捉えた公民館運営を図っていくため、公民館運営協議会の体制を充実していきます。
   ・ 部会と連携した事業を推進していきます。
   ・ スポーツ推進委員、青少年指導員、地区子ども会育成連絡協議会等と連携した事業を推進していきます。
   ・ 小・中学校と連携した事業を推進していきます。
   ・ 公民館利用者団体協議会による自主的な公民館運営を促進します。
   ・ 公民館活動を推進する指導者や協力者の発掘・育成に努めます。

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