我が街の熱中人(その7)

  我が街の熱中人

左手書きの裏文字で書道吟を極める!!

今回の熱中人

石井 照男さん

奥様のタミさん
(市内並木4丁目在住)

石井先生ご夫妻
石井先生ご夫妻

石井書道教室 
 塾長 教授  石井 荘仙
 奥様 教授  石井 祥仙

書道との出会い
 小学生低学年のころ、父親から書道の道具を与えられたのがきっかけで、書いた字を見た親戚の人達が「なかなか上手だ」と褒めてくれました。それに励まされていっそう字の練習に熱が入りました。
 私の出身は地元丸崎で昭和3年生まれです。上溝小学校の担任の先生が書道に熱心でした。もともと左利きの私を心配して右利きにするよう指導されました。それで今では両手利きで便利をしています。

書道教室開塾
 23才のころ、近所の子供達に書道を教え始めました。で、昭和40年に今の場所に開塾しました。はじめ日本書法芸術院という流派に属していましたが、現在はその流れを汲む書法院という流派に属しています。生徒も沢山いて忙しかったです。塾は奥様と一緒に協力しながら運営に当って来ました。教え方を工夫しているうちに逆さ文字も自由に書けるようになりました。

書道吟を1人でこなす
 昔から「書道吟」という一種のショーがこの道に関心のあ人達に楽しまれて来ました。これは吟詠(例えば詩吟)に合わせて書道を披露するものです。普通は吟詠と書道は別々の人が担当します。ところが石井先生はそれを1人でこなしてしまいます。

裏文字自由自在
 「裏文字」とは簡単にいえば「ハンコの字」です。卑近な例は自動車を運転していてバックミラーに写る後続車の車体ナンバーです。すべてが左右反対に見えます。漢詩を裏文字で書くのは容易ではありません。石井先生はそれを「左手」でしかも1人で書道吟を披露するわけです。実に驚異的な手法です。

書道吟の実際をご覧下さい

詩吟の題

不識庵機山撃図
(川中島)
富士山 明朗 文字で書いた「明朗」を反対側から透かして見るとご覧の通り普通の書体として読むことができます
作者 頼山陽 石川丈山 渡辺岳神

吟の
大意

上杉謙信と武田信玄の一騎打ち 富士山のすばらしさを詠う 世の中明朗の心で処すことが幸福に繋がる
吟詠と
書道
奥様が吟詠し先生が右手で書道 右手書き
書道吟
左手書き裏文字
書道吟
書道吟の
披露
詩吟「川中島」を奥様が吟詠し先生が右手で書道 詩吟「富士山」を右手で書道吟 詩吟「明朗」を左手書き裏文字書道吟 左手裏文字で書いた「明朗」を裏から透かして見ると普通の書体になる

長年書道に携わって

 この道に長年携わって来ますと教え子も数多く、成長された姿を見るのが楽しみです。また両手で書道を究め裏文字書きで書道吟を披露するという特異な手法を開拓しました。それが縁で例えば公民館関係、民生委員の関係また老人会の関係あるいは書道展その他で出演依頼が結構あって忙しいです。しかしそれも皆さんに書道を楽しんでもらえると言う意味でやりがいのある仕事と思っています。また、書道の上達は結局「忍耐と継続にある」との先生のお話でした。

最後に日本最高の名山 詩吟「富士山」を紹介します。

仙客来遊雲外巓
神龍棲老洞中淵
 雪如がん素煙如柄
白扇倒懸東海天

詩吟「富士山」の完成と石井先生
詩吟「富士山」の完成と石井先生
         仙客(せんかく)来たり遊ぶ雲外の巓(いただき)
神竜棲み老ゆ洞中の淵
       雪はガン素の如く煙は柄(え)の如し
      白扇倒(さかしま)に懸かる東海の天
 
 今回の取材を通して、石井先生夫妻のこの道での活躍に加え「書道吟」という世界のあることを知り、同時にその芸術性の奥深さに感銘を受けました。