


田名地区は、相模川をはじめ鳩川や八瀬川が流れ、多くの湧水も点在する地域である。田名公民館では、こうした水に恵まれた環境を生かした事業が行われている。
ひとつは蛍観察を含めた「環境講座」である。望地キャンプ場付近には田名では数少ない水田があり、6月初旬から7月初旬にかけて用水路周辺で数多くの蛍が飛び交う。蛍はきれいな水の流れがなければ繁殖しない昆虫であり、蛍の存在は用水路の水がきれいであることを証明している。しかし、以前はこの流れも汚れており、関係者がゴミを取り除いたり、ザリガニなどを駆除したりしながら、清流を取り戻したのだ。環境講座ではこうした努力を学んだ後に蛍観賞を行った。観賞日は雨で1日ずれたものの、たくさんのやさしい蛍の光に触れることができ、参加者に感動が広がった。
もうひとつがこの用水路横の水田を借りての「餅米づくり講習会」である。代掻きから始まり、田植え、草取り、土用干し、稲刈り、脱穀などを参加メンバーが共同して行おうという事業である。当然のことではあるが、米作りは自然が相手である。日々の見回りが必要になる。水が多くないか、藻は繁殖していないか、雑草が生えていないかなどを常に観察し、必要な措置をしていく。このためメンバーで担当表を作って定期的に見回りをしている。苦労は多いが、水田がある環境だから出来る講習会である。
しかし、もともと相模原は水田が少なく、主食は畑でとれる麦であった。このため、小麦粉でつくる「うどん」や「まんじゅう」などが多く食べられてきた。中でも酒まんじゅうは、初夏から秋にかけてのご馳走であり、各家々で作り方や味が多少異なりお袋の味が継承されてきていた。しかし、最近では自宅で酒まんじゅうを作る家庭も減ってきている。田名公民館では、伝統の味を継承するため「酒まんじゅう講習会」を実施して、多くの人に作り方を知ってもらっている。
伝統といえば、前述の餅米づくりで得られた藁を利用して行う「しめ飾りづくり講習会」がある。この事業は伝統的なしめ飾りづくりを実習・体験することで、田名地域の文化に触れ、次世代へと伝承していくことを目的としている。
餅米づくりは順調に進んでおり、収穫後に行う餅つきが楽しみである。田名は自然が豊かで伝統に育まれた地域である。この特性を生かした事業を今後も続けていきたい。
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